洋蘭原種 ゴメザ クロエサス Gomesa croesus

 ゴメザ(Gomesa R.Br. 1815)は、オンシジューム亜連(Oncidiinae)に分類される、ブラジルを中心とした南米大陸の森林に分布するラン科植物の属名である。この属に含まれる種は多様な花形を有するが、その多くは側萼片が融合した共通の特徴を持つ1。分子系統解析により、オンシジューム類と呼ばれているグループが著しく多系統群であると判明して以降、オンシジューム亜連に含まれる種は大規模な分類の見直しがされ、今なお進行中である。ゴメザ属はもともとブラジルに自生する11種で構成された小さな属であったが、一部の例外を除きブラジルに主な分布中心があるオンシジュームはゴメザ属に移された2,3。現在ゴメザ属は100種を超える大きな属となり、オンシジューム亜連の中で主要な属の一つとなっている。

 ゴメザ・クロエサス(Gomesa croesus (Rchb.f.) M.W.Chase & N.H.Williams 2009)は、ブラジル・リオデジャイネイロ州のオルガン山脈(Serra dos Órgãos)に見られる。草丈は10-15cmほどと小柄で、3cmほどの鮮やかな黄色と茶褐色の花を着け、同じゴメザ属であるゴメザ・ロンギペス(Gom. longipes (Lindl.) M.W.Chase & N.H.Williams 2009)と花形が良く似る4。従来、この種は園芸的に薄葉タイプのオンシジュームと呼ばれ、花茎は節ごとにジグザグに折れ曲がる花序を取り、一花茎に最大7-8輪ほどの花を着けるようだ。

 この個体は昨年のドームらん展で入手した物だが、強健で栽培は容易とされるものの、一度脱水気味にしてしまったためか、小さなバルブ一つに一花茎三輪のみと寂しくなってしまった。素焼きバーク植えではやや水が足りないのかな。

 

Gomesa croesus
花の大きさ: 2.5 cm × 3.0 cm バルブの大きさ: 3.0 cm 葉の大きさ: 4.0 cm × 0.8 cm 7.5 cm素焼き鉢バーク植え

 

唇弁、柱頭、葯帽は鮮やかな黄色、側花弁と萼片は茶褐色をしているが先端は極僅かに黄色い。

 

唇弁中央、茶褐色をしているカルスは前に突き出る。
側花弁と萼片は展開するにつれ後ろに反れていく。

 

側萼片は基部から1/3ほどの長さまでつながっている。

 

[栽培記録]

水苔植えから発酵バーク植えに変更。
バックバルブに深くシワがより、脱水気味に。

 

根が張り、バックバルブのシワがやや回復。

 

晩秋に出た芽に花芽が付く。

 

三輪開花。

[出典]

1: Neubig, K.M. et al. (2012) Generic recircumscriptions of Oncidiinae (Orchidaceae: Cymbidieae) based on maximum likelihood analysis of combined DNA datasets. Botanical Journal of the Linnean Society 168: 117–146.

2: Pabst, G.F.J. & Dungs, F. (1977) Orchidaceae Brasilienses. Hildesheim: Brücke Verlag.

3: Chase, M.W. et al. (2009) Floral convergence in Oncidiinae (Cymbidieae; Orchidaceae): an expanded concept of Gomesa and a new genus Nohawilliamsia. Annals of Botany 104: 387– 402.

4: Williams, B.S. (1885) The Orchid Grower’s Manual, 6th edn. Victoria and Paradise Nurseries, London.

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